腰痛の原因が下肢の筋肉の拘縮にある事はあまり知られていません。 つま先や両膝をぴったりと閉じて前屈してみましょう。

前屈して指先が床にタッチできない方は要注意です。

前屈が十分にできない方の90パーセントは、太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)やアキレス腱が硬いケースが大半です。

残りの10パーセントは腰椎椎間板ヘルニアや後縦靭帯骨化症などで背中の筋肉が硬いケースです。

下肢の拘縮をかばうために無意識のうちに膝や股関節、腰の関節を過剰に曲げることになります。

下半身の運動の支点は仙腸関節にあります。 ところが下肢後面の筋肉が拘縮すると仙腸関節が動きすぎてしまうために仙腸関節炎になるのです。

下肢の筋肉の拘縮を改善することで仙腸関節炎や腰仙関節炎が改善するケースが大半です。

例えると睡眠時に歯ぎしりがひどい方が、マウスピースを装着して寝るとそれによって起きていた首や胸や背中の痛みが解消するようなものです。

下肢の筋肉の拘縮を放置するとやがて腰の関節炎(腰仙関節炎や仙腸関節炎)やひざや股関節の関節炎になりやすいのです。

言い換えると腰痛やひざ痛、股関節痛の真の原因である下半身の筋肉の拘縮を自覚する前に、動きすぎる関節や筋肉の痛みを自覚する方が大半なのです。

下肢の筋肉の拘縮のために前後開脚の動きが悪い方は仙腸関節炎になりやすい傾向があります。

左右の回旋(内旋と外旋)や左右の測屈が十分でないと腰仙関節炎になりやすいのです。

したがってそうなる前に下半身の筋肉の拘縮を改善する事が腰痛などの症状を根本改善することになるのです。

腰痛で苦しむ患者さんの大半は下部腰椎の痛みを訴えます。 下部腰椎(脳から数えて上から腰椎の4番、腰椎の5番といいます)は腸腰靭帯という強靱な膜で連結されているために腰椎の本来の動きである前屈や後屈、左右の測屈の際にほとんど動くことがないのが正常なのです。

具体的には側屈は成人の場合左右の可動域はわずかに1度(中学生は7度)です。 左右それぞれ2本ずつある靭帯が延びると、これ以上の動きが起こるために筋肉の防衛反応が働く結果として腰痛になるのです。

このように靭帯が伸びて腰痛を訴えるケースは大別すると次の2種類に分類できます。

1、主に前屈が十分にできない腰椎椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症など。

2、主に後屈が十分にできない腰椎分離すべり症、腰部脊柱管狭窄症,前縦靭帯靭帯骨化症など。

いずれのタイプの腰痛もまず最初に椎間板に変性が見られ、次に骨に変形が起きることがわかっています。

現在では腰椎分離すべり症では筋肉などの軟部組織をあまり切らない低浸潤手術がメインです。

従来の方法では体の背面から手術を行っていました。 ところが現在では側面から人工椎間板を伴った人工骨を入れ、背面にわずか3センチのボルトを入れて締める為の穴をあけるだけです。

このように手術は格段に進歩しているのですが、それでも完治率は20パーセントしかないのです。

したがって患者さんにとってベストな選択は、出来るだけ早期に可動域を正常に回復するべきなのです。

私の臨床経験は今年で43年です。

その長い臨床経験で得た結論は、腰痛などの関節炎が重症化する前に予防体操をすることの重要性です。

下半身の筋肉の拘縮は4歳以前の転倒が原因です。 したがって大半の患者さんは覚えていません(幼児期健忘症のため)。

それ以降の骨折や捻挫などの後遺症であれば覚えているはずです。

私は下半身の拘縮を自分で改善できる健康器具を考案し、2020年1月9日に特許出願しました。

この健康器具を使用することができない方でも拘縮がひどくなければ簡単な体操でわずか1分でその場で改善を確認できます。

その運動を3か月継続する事で中程度の拘縮であれば自分で改善する事も可能です。

次回はその方法について解説します。