仙腸関節炎が原因と思われる患者さん(50歳男性、茨城県竜ケ崎市)が来院されました。
詳しく問診してみると、この患者さんが仙腸関節炎になった原因は左腰の肉離れにあると思われました。
その理由は、肉離れのために左股関節の屈曲が制限された状態が約1か月続いていたのです。
具体的には立ってズボンをはく動作に制限があったということです。
肉離れの症状はひと月で軽減しました。
しかしながら、今度はもともとあった腰部の痛みではなく、左下肢の痛みとしびれが出てしまったのです。
立位での可動域の検査で前屈と後屈に制限はある者の緊急を要するレベルではありませんでした(足をそろえて膝を触れない状態ではない)。
伏臥位での緩和操作、側臥位での緩和操作の後に、仰臥位でのSLRテスト(ひざを伸ばしたままで60度以上屈曲できるか)は正常でした。
DLR(両足をそろえて挙上できるか)も正常でした。
仙腸関節炎の検査であるゲンズレンテスト、パトリックテスト、逆パトリックテストも正常でした。
腰仙関節炎と腰椎椎間板ヘルニアの検査である側屈テストも正常でした。
これらの整形外科テストはすべてマイナスであることを確認した後に、仰臥位での股関節の調整、ひざ関節の調整、足関節の調整を行いました。
そのあとで肩関節、肘関節、手関節の調整を行いました。
次に座位での脊椎の調整、側臥位での脊椎の調整の後に仙腸関節の調整を行いました。
その際に初めて患側(左側)の仙腸関節の弾力の異常を認め直ちに調整しました。
最後に仰臥位で仙腸関節の調整を行いました。
全身の関節の調整を終了した後に、全身の関節の滑らかさを回復することを目的としたリハビリテーションを行いました。
すべてのケアーを終了した後で再び立位でのモーションペイン(動いて痛みや制限があるか)を検査します。
すると治療前と比較してはっきりと可動域の改善が認められました。
発症して14日が経過しているとのことなので、急性期は28日である事をご説明しました。
わかりやすく例えると嵐の状態は28日で過ぎて、次のひと月は晴れたり曇ったり、最後のひと月は晴れてくるという事をご理解いただきました。
仙腸関節炎は下肢痛やしびれを伴うことはありません。
この患者さんの症状は、肉離れをかばったことによる関節機能障害(関節の弾力の異常)だと考えられます。
つまり腰椎椎間板ヘルニアの症状のようですが、腰椎椎間関節の弾力異常による関連痛であることはほぼ間違いないのです。
大切なことは症状が起きた部位だけではなく全身の関節の弾力を検査し調整することだと改めて考えさせられた次第です。