腰痛、背中の痛み、首の痛みを総称して背中の痛み(主に背中の後ろが痛むので、バックペインと呼びます)といいます。
一方で、肩、ひじ、手首、股、ひざ、足首の関節の痛みを総称して関節の痛み(ジョイントペイン)といいます。
全身には約206個の骨から構成される約200個の関節が存在します。
正常であれば8方向に1ミリずれて復元する免震構造システムのような機能がある事をご存知でしょうか。
それは巨大地震の衝撃を10分の1以下に緩衝する免震構造システムに勝るとも劣らない素晴らしい機能なのです。
関節の運動は次の3段階があります。
1、自動運動(筋肉の運動)。
2、たわみ運動(力を与えるとはじめて起こる自動運動を超えたたわみの動き)。
3、遊び運動(たわみ運動からさらに限界まで最大で1ミリ程度の範囲で動く運動)。
具体的に説明してみます。
立った状態で膝を曲げてみましょう。
この運動でかかとがお尻につく人間は世界に一人もいません。
それではゆっくりと注意深く正座してみましょう。
体重をかけると、筋肉で動く範囲を超えてたわみが起こり、最後に遊び運動が起きてかかとがお尻につくまでひざ関節が曲がるのがわかりますね。
このような運動の段階の仕分けは、ひざ関節を捻挫して痛めた時でもない限り正常時はほとんど意識することはないのです。
言い換えると自動運動を超えたたわみや遊び(いわゆる関節の弾力の動き)は我々をねんざや骨折などのケガから守ってくれているのです。
つまりこの運動(たわみや遊び)があるおかげで転倒や他の衝撃で限界を超えて関節被膜(筋肉、腱、靭帯、軟骨など)が損傷することが予防されているのです。
相撲のまた割をイメージしてみましょう。
入念な運動(すり足、四股、鉄砲、基本げいこなど)の後にまた割を行います。
また割が十分にできない人間は、130キロを超える兄弟子から体重をかけて押してもらい胸か床につくまで曲げられるように補助してもらいます。
同様な運動を横(体幹の側屈)でも体重をかけて押してもらいます。
もちろんこのような運動をする人間は15歳から16歳です。
幕内で三役を務めた力士に来てみたところ、また割が十分にできるのは十両以上の力士だそうです。
反対にまた割ができないような人間は幕内には到底なれないというわけでしょう。
ちなみに一般のスポーツ選手は、開脚、長座、胡坐の状態で前屈して頭が床につけば柔軟性は優れている方で、最低でもその可動域を目指して、現実には両肘が床につく程度でも十分にケガをしないレベルなのです。
スポーツ選手の引退のきっかけの80パーセントは、筋肉の断裂が原因です。
また筋肉の断裂の原因は下半身の関節の拘縮が原因なのです。
大切なことは、症状が現れている部位(例えば、腰痛、ひざ痛、肩の痛み、肘の痛みなど)がどの部位であろうと、必ず丁寧に全身の関節の可動域を検査することです。
私が考案した関節ニュートラル整体は、毎回全身の関節の検査とリハビリテーションを駆使するのが基本ルールです。
そうすることで初めて、痛む関節が回復しない原因を突き止め改善することができるのです。
いずれにしても、神業で回復不能になった患者さんが治ることは残念ながらありません。
そんな非科学的なことよりも、柔軟性が十分でない関節を見つけ、けがを未然に防ぐ事がベストなケアーなのです。