3か月以上経過しても改善しないひざの痛みで苦しむ方の90パーセントは、柔軟性が平均以下であることが原因になって回復しないのです。
具体的に言うと、開脚、正座、長座の状態で前屈して胸をつくことができるか。
もう一つ正座してお尻を落とした状態であおむけに寝ることができるか。
この動きを調べることで下半身の筋肉と関節の可動域がわかるのです。
大多数の方は前屈が硬く、頭がつく方レベルに到達している方は全体のわずか20パーセントです。
つまり頭がつくことを目指して前屈して両肘がつければ、柔軟性に関してはなんとか合格レベルなのです。(参考までに前屈して胸がつく人間は全体の1パーセント以下です)
2足歩行の人間は下肢後面や背骨の裏側の筋肉(背骨を直立することができる筋肉)が発達したがゆえに立ち続けることができるのです。
その結果として若いうちは前屈ができて後屈もできるのですが、45歳以上になると(特に65歳以上)次第に後屈がやりずらくなるのです。
ところが約半数の方は若いうちから前屈が十分にできません。
延べ数十万人の体を観察した経験から、仙骨や尾骨が一つの骨になる前にひどく尻もちをついたために起きたと思われる変形のない方は全体の20パーセントにも満たないのではと思われます。
これは米国でのリサーチによると、腰椎椎間板ヘルニアが20代の内の1000人中500人であることからも転倒による外傷性関節炎の原因であろうと思われます。
前屈が十分にできない方は、前屈の動きを代償して過剰に後屈が動きすぎることになるのです。
結果として、45歳以前から腰痛やひざ痛に悩むことになるのです。(45歳以上になると30倍の方に変形性関節炎が確認されます)
つま先と両膝をぴったりと閉じて前屈して拳を握りしめた状態で床につくか調べてみましょう。
拳が床につけばFFD(フットフロアーディスタンス⁼前屈して指先が床につくか否かを調べる柔軟テスト)はプラスです。
柔軟体操で結果を見る目安として、前屈して拳骨がつく荷を目指して最低でも指先がつけば合格点なのです。
身体が硬い方は膝を曲げて拳骨を床に着けてみましょう。
この運動でどれくらいひざや腰を曲げているかを正常な方と比較すれば、下肢の筋肉の拘縮(改善できる硬さを拘縮、出来ない固さを硬直といいます)の程度がわかるのです。
すでにお気づきのように、ひざ関節の痛みが改善しない原因は下肢の筋肉の拘縮です。
したがって対症療法で痛みが軽減したとしても完治したとは言えません。
ひと月に1度の足の爪切りに不具合を感じたら変形性膝関節炎の始まりです。
やがて手術が必要となるレベルまで変形が進むと、毎日靴下やズボンをはくことに不自由を感じるようになります。
30分連続して歩行できない方は初期、100メートル歩行できない方は末期の変形性膝関節炎なのです。
和式トイレに座りにくい方は初期、洋式トイレに座りにくい方は末期の状態なのです。
反対に膝を延ばせなくなれば末期なのですが、ひざを曲げないと指先が床につかない状態であれば、未然に予防改善の筋トレストレッチをマスターするべきです。
もうお判りでしょう。
長引くひざ関節の痛みが回復しない原因は下肢の筋肉の拘縮です。
次回は自分で下肢の筋肉の拘縮を改善できる運動療法を書いてみます。