仙腸関節炎の9割は改善できます。

仙腸関節は骨盤の中にある寛骨(腸骨、恥骨、座骨が一体となった骨です)と仙骨を連結しています。

関節の運動は次の3段階に分類できます。

1、自動運動(筋肉で動く範囲)。

2、たわみ運動(力を与えると自動運動の範囲を超えてたわみが起きます)。

3、遊び運動(たわみ運動の範囲からさらに限界までわずかに動く範囲)。

仙腸関節の運動範囲は極めて小さくどんなに柔らかい方(新体操の選手のように前後や横の開脚が180度以上できるケース)でも自動運動の範囲はわずかに1度程度なのです。

仙腸関節は、それぞれ左右に2個づつあります。

不用意な関節の運動(歩いていて穴に落ちたり、足首を捻挫したり、しりもちをつく等)の際に捻挫する関節として知られています。

この部位は下半身の運動の軸になっているのです。

脊椎動物の前後の動き(人間でいう前屈と後屈)や左右の動き(左右の測屈の動き)について考えてみましょう。

立った状態でのでの前屈の際に、股関節の屈曲が90度を超えて骨盤が後方に動くのがわかります。

ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)やアキレス腱が拘縮していたり、仙腸関節が拘縮(主に屈曲の障害)しているとこの動作が十分に行われません。

反対に後屈した状態でも、股関節が15度を超えて骨盤が前方に動くのがわかります。

その際に腸腰筋(大腰筋と腸骨筋)が拘縮していたり、仙腸関節の拘縮(主に伸展障害)があるとこの動作が十分に行われないのです。

このような理由で、十分な前屈や後屈、左右の側屈ができないと、仙腸関節の動き(骨盤がずれる動き)を脊椎椎間関節(背骨の関節)が代償してしまいます。 その結果腰痛や背中の痛みや首の痛みが改善しない状態になるのです。

何よりも大切なことは、症状が現れている関節だけではなく全身の関節の弾力を検査して調整することなのです。

仙腸関節の痛みは次の2パターンがあります。

1、仙腸関節の関節可動域が減少しているタイプ。 このタイプは直接仙腸関節の可動域を改善する手技に十分反応します。

仙腸関節は上部離開、上前部離開、下前部離開、上部圧縮、上前部圧縮、下前部圧縮に加え、右上部屈曲から伸展。右下部屈曲から伸展。

左上部伸展から屈曲。左下部伸展から屈曲の検査と調整を行います。

まとめると、仙腸関節は左右にそれぞれ2個づつありますので合計4個あります。

まず最初にそれぞれの関節に6通りの圧縮とけん引を加えます。

次にそれぞれの関節に屈曲と伸展をしますので合計8通りの操作をすることになります。

つまり全体で14種類の検査と調整をすることになるというわけです。

2,14種類の操作すべてにおいて関節の可動性が亢進しているケースは非常にまれです。

私が44年にわたり観察した症例によると、大多数の患者さんは幼児期(3歳以前)に尻もちをつくことがそもそもの原因だと考えられます。

人間の海馬は3歳で完成されるので、3歳以前の記憶はありません(幼児期健忘といいます)。

尾骨が変形している患者さんはとても多いのですが、必ず仙腸関節炎になるとは言えません。

たまたまヘルニアや脊柱管狭窄症という症状になるか、仙腸関節炎になるかというわけです。

いずれにしても全身には約206個の骨から構成される約200個の関節が存在します。仙腸関節はそのうちの4個にすぎません。

したがって仙腸関節の痛みを根本改善すためには、全身の関節の8方向の弾力を検査して調整することが必要不可欠です。

もう一度繰り返します。

仙腸関節炎を根本改善するためには、全身の関節の調整の最後に下半身と上半身を連結する靭帯結合の仙腸関節を調整することが大切なのです。